帰国生シリーズ 帰国生に何が求められているか?

帰国生選抜試験において大学サイドは帰国生に対して何を求めているのであろうか。

学力という点でいえば、帰国生に対しては、あまり期待されていないといってよい。大学側が帰国生に求めているのは自発的な行動力・個性的な思考力・自己主張の明確さである。欧米系の教育システムの中で教育されてきた帰国生は、ディベートやディスカッション、研究レポートの作成などは当たり前のものであり、国内生が鍛えることが出来なかった能力を存分に備えているだろうことが期待されているのである。さらに、多感な思春期に海外生活したことによって、独特な個性が育っているのではないか、バランスのとれた国際感覚が身についているだろうなどの期待まで帰国生に掛けられている。

何よりも、異文化を経験し、社会制度も文化も全く異なる社会の中で生活し、勉強した経験をもとにして、様々な社会的時事問題を考察していく上で、国内で生活しているものには見出しえないような独特なものの見方を提示してくれるのではないか、海外での様々な経験や見聞を活かした斬新な視線から切り込んでくれるのではないか、突拍子もない面白い発想で心地よい驚きを与えてくれるのではないか、などと期待されているのである。

実際にはこれらの期待は

大学サイドのそうあって欲しいという願いを込めた思い込みに過ぎないのである。残念ながら、実際は帰国生に対する期待が、実体のない虚しい幻想であるかということを感じさせられでしまいます。学校と家庭という狭く閉じた空間で生活し、数週間遅れで入ってくる日本のTV文化に浸っている帰国生は、実質的には日本の辺境で生活しているに等しい。

その証拠に、大半の帰国生は、文化比較が問われれば、日本人は集団主義的で欧米人は個人主義的だと述べ、教育について問われれば、日本の教育は知識偏重の詰め込み教育であり、画一的で無個性な人間を量産しているが、欧米の教育は個性尊重主義であり、個性的で自律した人間を育てる教育であるということを書いてしまう。

近年では、海外経験にあまりこだわらない

専攻分野に関する基本的能力を問う問題が増えてきている。大学によっては、実体のない過剰で無責任な期待に過ぎないことを重々承知の上で、それでも敢えて帰国生の個性的な思考力・国際感覚・異文化経験を生かした斬新な視線になおも期待し続け、海外経験を問う出題をしているのであるから、帰国生としては、自分たちに何が求められているのかということを、意識的に自覚して欲しい。